神様が繋いでくださったもの

2023年5月21日英語礼拝

メッセンジャー:ジム・アリソン牧師

マタイの福音書 19章1-12 節 

「神様が繋いでくださったもの」

 

 5年前、米国シカゴ市のラーム・エマニュエル市長(バラク・オバマ大統領の首席補佐官を務めていた)は、市内での驚くべき数の殺人やその他の犯罪について話し、この問題と闘うために何が必要だと考えているかを説明しました。 

……私は信仰と家族ができること、その力を知っています。私たちの子供は、その仕組みを必要としています。……また、私は、人格、自尊心、価値観、そして子供たちが善と悪、正と邪を区別することができる道徳心を育むのに役立つことの重要性について徹底的に議論することから逃げないようお願いします。

 

 人種差別によって、安全で平和に暮らすことがいかに難しいかを理解していないと抗議する人もいました。

 また、「彼は不快な真実を語っている」と言う人もいました。それ以来、この都市の犯罪状況はかなり悪化しました。

 

 私たちは最近、ここオープンドアで、聖書の神様が家族について何を教えてくださっているかを学んでいます。私たちは、それが神様の栄光と私たちに益となるために神様によって創造され、人々に与えられたことを見てきました。人間社会を形成する際、神様は私たちの幸福のための計画の一環として、人々を家族単位にまとめることを選択されました。シカゴやアメリカのように、犯罪の防止に特別な苦労をしている地域だけでなく、あらゆる文化圏のすべての人にとって、健全な家族関係の中で生活することは、人間の繁栄にとって重要な要素です。主が意図された「良い人生」のために必要なものです。それがなければ、すべてが壊れる傾向にあります。

 

 今日は、少なくとも家庭生活の重要な部分の1つである結婚について見ていきたいと思います。聖書が示しているように、結婚は人間形成に関する神のご計画の重要な部分です。伝統的な結婚を批判する人たち(例えば多くの共産主義者や一部のフェミニスト)は、結婚は基本的に富裕層が貧困層を支配し、男性が女性を支配し続けるための手段であると主張しています。

 

 キリスト教的な理由から、もし結婚がこのような経済的、政治的な取り決めに沈むならば、結婚はその本質的な意味と目的を失うことに同意できます。問題の解決は別件ですが、神様が結婚という制度を私たちに与えたとき、そもそも神様が何を念頭に置いていたのかを、もう少し注意深く振り返るのに役立つかもしれません。今日は「そもそも神様が何を念頭に置いていたのか」に焦点を当てたいと思います。

 

 一般的に言えば、聖書の神様は、神様の王国をこの世にもたらすという偉大な働きにおいて結婚を利用したいと考えておられます。イエスが12節で述べているように、人々は(既婚者も未婚者も同様に)「天の御国のために」ここにいます。そこは、愛が人間関係に動機を与え、力を与える王国です。それは尊敬、平和、協力の内に示されます。このような世界で結婚が神様の意図された役割を果たすとき、結婚は人々を分断したり奴隷にしたりするのではなく、私たち全員を団結させ、自由にするのに役立ちます。

 

 しかし、結婚についてのより大きく包括的な教えを超えて、マタイの福音書19章のイエスのメッセージの中にあるより具体的で実践的な質問をいくつか見てみましょう。(マルコの福音書10章にも同様の短いバージョンがあります)。

 

 そもそも、キリスト教の考え方では、独身でいるより結婚している方が良いのでしょうか?いいえ、必ずしもそうではありません。結婚が人類に対する神様の基本的な計画であることは明らかですが、神様は私たち一人ひとりに独自の計画を持っており、すべての人を結婚に導くわけではありません。もちろんナザレのイエスもその一例です。今日の聖書箇所の12節で、イエスは「母の胎内から、そのように生まれついた独身者」について語られました。彼は、神様が彼らに向けた最善の計画として、独身者として生きるよう神様に召された人々のさまざまなカテゴリーを列挙しています。

 

 その中には、特定の身体的条件を抱えている人も含まれます。これらにより、結婚生活が成り立たなくなる可能性があります。

 

 また、例えば聖書時代の王には、宦官と呼ばれる特別な種類の召使いがいて、(彼らは)その奉仕に人生を完全に捧げていたかもしれません。セックス、家族、子供を持つことに伴う多くの複雑さを避けるために、国王は宦官に性器の一部を除去するよう要求します。(もし今日そのシステムを再起動しようとしても、志願者はそれほど多くないと思います。)

 

 「人から独身者にさせられた者」たちのほかに、もし結婚関係にあったならおそらく維持できないであろうライフスタイルに神様が導かれた人々もいます。私は北星学園の創立者サラ・スミスや、結婚をしない人生を歩んできた他の多くの女性宣教師のことを思い出します。皆さんの中には、日本バプテスト連盟北海道地方連合のいくつかの教会の設立に尽力したアニー・フーバー宣教師と野村宏子さんを覚えている方もいるでしょう。神様は彼女らの独身生活を豊かに祝福し、そして彼女らを通して、私たちを含む多くの人々を祝福されました。

 

 イエスは、このような独身者のカテゴリーを「二流のクリスチャン」として提示してはいません。ですから、彼らがまだ人生の中で自分の居場所を見つけていない人たちであるという考えを私たちが何らかの形で発展させても意味をなしません。独身生活は、神様があなたを特別に導いてくださったなら、一時的であれ、一生涯であれ、最高であると神様は言います。しかし、それはすべての人のためのものではありません。イエスは、この人生を歩むことを教えるのは「それを授けられている人々」(12節b)に限定しています。

 

 独身生活を求められるこれらの人々には、結婚相手を亡くした人々も加えることができます。再婚するように召されていると感じる人もいますが、そうでない人もいます。いずれの場合でも、主が人を独身生活に召される時期がしばしばあります。主がそうされたとき、その人の最大の充実感は、その独身生活を送ることにあるのです。独身生活は孤独であり、誘惑も既婚者と同じではありません。しかし、その時こそ、キリストの臨在と交わりを知る特別な機会でもあるのです。

 

 既婚者と未婚者に対する聖書の教えを理解するには、聖書の神様が持っている根本的な理解を見る必要があります。セックスと結婚と子供はセットです。1つ以上を取り出したり、それらを互いに切り離したりすると、問題が始まります。旧約聖書の律法はこれを明確にしていますが、イエスの時代と文化では、それはほぼすべての人が単に当然の事としていたため、それを言う必要はほとんどありませんでした。

 

 しかし、現代では、私たちの多くが、1960年代に始まった性の革命の影響を強く受けた文化圏で育っています。これらの国では、性的な関係にあるカップルや、時には子供のいるカップルが、結婚せずに一緒に暮らすことが、当時よりずっと一般的になっています。また、離婚も大幅に増加しました。「World Psychiatry」誌に掲載されたD'OnofrioとEmeryによると、これらの傾向は西洋文化圏で最も強く、アジアの先進工業国でも増加しているとの事です。

 

 多くの人々は性の革命を歓迎し、それがより大きな自由と平等をもたらすと信じていました。数十年が経過した今、私たちはその効果をよりよく確認する事ができると考えます。その一例として、米国では現在、出生の10人に対して4人が未婚の女性から生まれています。要するに、結婚し、生物学的な両親と一緒に暮らす子供はわずか60%にとどまっています。母親のみと一緒に暮らす子供の数は2倍になり、人口増加よりもはるかに速い増加です。また、シングルマザーのうち36%以上が貧困にあえいでいます。

 

 これらの変化は、特に不幸な結婚生活を送っている女性や、争いの多い家庭で暮らす子どもたちにとっては小さな問題、あるいは改善と捉える人もいます。しかし、特に子どもたちにとって、大きな公衆衛生上の問題であると考える人もいます。著者は、自分たちの研究が、離婚や別居が子どもや十代の若者が成長するにつれて起きる問題を生じさせるリスクの高まりに関連を示していると述べています。それらには、学校での困難(成績の低下や完全な中退など)、抑うつ気分、破壊的行動(トラブル行為や薬物問題など)などが含まれています。また、離婚/別居した両親の子どもたちは、危険な性的行動に巻き込まれたり、貧困の中で暮らしたり、後年になって家庭が不安定になる可能性が高くなります。性の革命は、約束されたすべての解放と幸福をもたらしているわけではないようです。

 

 イエスが弟子たちに、離婚したり結婚生活の外にセックスや子育てを移したりしないよう話した際に、このような問題を念頭に置いておられるようです。「時代が変わった。今はそういう時代なんだ。」キリストとその信者にとって、これは説得力のある議論ではありません。現在の流行に従うことが神様の目標ではありません。ストレスを避けるために周囲の人々と違うことを避けることは、神様の行うべき重要なことのリストには含まれていません。

 

 全知の神の子として、イエスは人々が結婚以外の方法で一緒に暮らすことや、結婚が失敗することもあるということを十分に理解しておられます。私たちの天の父ほど現実的な方はおられません。そして、神様の私たちに対する愛は、私たちが神様の最善の計画から外れたとしても、変わりません。結婚を決意していない人や離婚を経験した人にも、他の人と同じように神様の恵みはあります。

 

 しかし神様は、セックスと子育てを結婚生活の枠内に留めるという神様の計画に私たちが従わない場合に、私たちの人生に大きな損害が生じることをご存じです。神様の教えは、結婚関係にある人々への配慮から生まれています。しかしそれは、神様の目には同じように重要でありながら、自分自身を守る能力が劣っている子供たちのためでもあります。

 

 「あぁ、イエス、これはひどく重いものを私たちにぶつけていますね!」弟子たちも「もし妻に対する夫の立場がそんなものなら、結婚しないほうがましです。」と答えています(10節)ので、おそらくそのようなことを考えているのでしょう。今日、私たちの文化圏に住む多くの人々も、強い結婚生活を築き、維持することの難しさを見て、「少なくとも今は、結婚しないほうがいいのかもしれない」と考えています。結婚につながるような真剣な交際をしないことを選ぶ人も少なくありません。また、結婚を約束しないで同棲し、性的にアクティブになることを選択する人もいます。このうち、2番目の反応について、少し考えてみましょう。

 

 多くの若者は、今日の文化から「買う前に試した方が安全だ」という強いメッセージを受け取っています。これは車を購入する際の良いアドバイスのように思えるので(米国では自由に車の試乗ができます)、夫や妻を見つけるための賢明なアプローチに違いないですよね? この考えに従って、彼らは、もし合わなかったら大きな間違いをする前にそれに気づいて別れるという希望を持って同棲を始めます。

 

 理解できるような気もしますよね? でも、それが良い人間関係につながるのでしょうか? 家族学研究所の2人の研究者、キャロルとウィロビーは、大量の既存データと新しいデータを調べました。彼らの結論は、(1)若者はパートナーと永続的で充実した関係を持ちたいと言っている。しかし、(2)事前に性的経験を持つことは、性的経験を得る機会を助けるどころか、害を及ぼします。総合的社会調査(*1)のようなデータセットを使って、彼らは「早婚の離婚率が最も低いのは、夫婦間でのセックスしかしていない夫婦たちの中である」ことが判明しました。特に、

 

……結婚するまでセックスを経験しなかった女性の結婚初期の五年間における離婚率はわずか5%なのに対して、結婚前に2人以上の性的パートナーがいたと報告した女性の離婚率は25%から35%の離婚率であることがわかりました。

 

 研究者らは、性的パートナーが1人しかいない成人が、関係の満足度、関係の安定性、性的満足度の全体的なレベルが最も高いと報告していることを発見しました。データは、他の人が行ったセックスが「献身的なパートナー(*2)」とのセックスであったのか、「カジュアルな」セックスであったのかに有意差がないことを示しました。どちらも将来の結婚生活に悪影響を与えるものでした。

 

 この研究や他の類似の研究に照らすと、結婚する前に同棲することで恋愛が成功する可能性が高まるという考えはほとんど支持されていないように思えます。(一人の研究者は「事実上証拠はない」と記しています。)

 

 それもあって、イエスが離婚法に関する一種のトリック質問を受けた時、彼はそれを結婚と人間の幸福について有益で時代を超越した何かを教える機会として使いました。イエスは天地創造の物語まで遡り、その時に神が定めた結婚のあり方が、どのような時代にも人々を導き続けることができると示されています。イエスは創世記2章24節の言葉を取り上げ、それをご自身の指示であると断言しています。「こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。」この二人は一人になる、つまり神は、心、魂、精神、力において、人々をご自身の契約の愛で繋いでくださります。それが神様の御心ですから、私たちはそのために祈りましょう。

 

 今日、私がお伝えしたメッセージは、神様が人々を結婚に導くことに焦点を当ててきました。人々がより強く、より豊かで、より楽しい結婚生活を築くために、神様がどのように助けてくださるのか、学び続ける機会がまたあればと願っています。私たちが神様の最も賢明で愛に満ちた計画を知り、その中で生きることができるように、神様が今日の時間を通して与えてくださった教えを、私たちが受け取ることができるように、今、神様にお願いしましょう。ではお祈りします。

 

 人々を愛のうちに結びつけ、また保ち続けてくださる神様、私たちは今日のあなたの御言葉の中に、結婚の契約を通して子供たちを結びつけたいというあなたの深い情熱を見ました。 あなたの深い情熱を再び知りました。 あなたの導きで結婚相手を探している人には、あなたにしかできない機会を与え、心を整えてください。 結婚している私たちは、約束を忠実に守って生活できるよう助けてください。 私たちが真にますます完全に「一人になる」ことができるように、力を与えてください。 赦されるべきところは赦し、励まされるべきところは励まし、学ぶべきところは教えてください。 そして、私たちがどのような状況に置かれても、あなたの深い配慮と変わらぬ愛で私たちを抱きしめてください。 キリストの御名において祈ります。 アーメン。

 

参考文献

キャロル・J.とウィロビー・B.(2023年4月18日).

性的経験の神話.家族学研究所(InstituteforFamilyStudies)。

2023年5月11日

https://ifstudies.org/blog/the-myth-of-sexual-experience-

から取得。

 

D’Onofrio,B.とEmery,R.(2019年2月).

世界の精神医学18巻(1)pp.100-101。

2023年5月8日

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6313686/

から取得

 

Hemez,P.andWashington,C(2021年4月12日).

母親とだけ暮らす子どもの数は、過去50年間で倍増している。米国国勢調査局(U.S.CensusBureau)。

2023年5月14日

https://www.census.gov/library/stories/2021/04/number-of-children-living-only-with-their-mothers-has-doubled-in-past-50-years.html

から取得

 

Mitchell,M(2018年8月11日).

エマニュエルは、たとえ間違ったメッセンジャーであったとしても、暴力について正しいメッセージを与えた。シカゴ・サンタイムズ。

2023年5月14日

https://chicago.suntimes.com/2018/8/10/18315582/rahm-emanuel-gave-right-message-on-violence-even-if-he-was-the-wrong-messenger

から取得

 

Rosenfeld,M.J.,Roesler,K(2018年9月24日).

同棲経験と同棲の婚姻解消との関連性。ジャーナル・オブ・マリッジ・アンド・ファミリー(JournalofMarriageandFamily).

ワイリーオンラインライブラリー(WileyOnlineLibrary)

2023年1月18日

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jomf.12530

から取得。

 

ストーンストリート、J.andBaer,M.(2023年1月13日)

同棲は結婚の準備にはなりません

 

2023年1月18日

https://www.breakpoint.org/cohabitation-doesnt-prepare-you-for-marriage-2/

から取得。

 

ストーンストリート、J.andMorris,S.(2023,4月26).

セックスの節約に関する頑固な事実:物事は神のやり方でうまくいく。

2023年5月10日

https://www.breakpoint.org/the-stubborn-facts-about-saving-sex-doing-things-gods-way-works/

から取得。

 

ストーンストリート、J.andMorris,S.(2023,4月l26).

離婚の犠牲者たち:傷ついた子どもたちの統計と物語。

2023年5月8日

https://www.breakpoint.org/the-victims-of-divorce-statistics-and-stories-of-hurting-children/

から取得。

訳註

 

(*1):「総合的社会調査(General Social Survey (GSS))」

アメリカの居住者を対象として、人口統計学的特徴や、(社会的)意識についてのデータを収集する目的で執り行われている社会学的調査です。

この調査は、シカゴ大学の全国世論調査センター(National Opinion Research Center)が、無作為抽出された18歳以上の成人(各種施設に収容されている者を除く)を対象に、直接面接方式により実施されています。

 

(*2): 原文は“committed partners”です。“Committed”とは、「献身的な」、「専心的な」、「約束した」などを意味し、性的関係では“Sexual fidelity”と同義と言えます。

“Sexual fidelity”とは、「たとえ一時的であっても、献身的なパートナー以外の性的パートナーを持たないこと」を意味します。

 

参考

“fidelity”は「忠実」、「忠誠」、「貞節」等を意味します。