ファミリーツリー

2019年12月15日主日礼拝 

「ファミリーツリー」マタイ1:16~25 佐々木俊一牧師

■10月にイスラエルへ行ってきました。イエス様がお生まれになったベツレヘムや、その後の幼少期から公生涯が始まるまで過ごしたナザレにも行ってきました。現在、7万人くらいの人がナザレに暮らしています。ベツレヘムと同じように、他の町に比べてクリスチャンの多い地域です。

 聖書を見ていきましょう。今日はマタイ1章です。マタイ1章にはイエス・キリストの系図が載っています。先週、エレミヤ書のところでバビロン捕囚の頃の王様の名前が出てきました。この系図の中にもその王様の名前を見つけることができます。ユダヤの人々は家系図をとても大切にして保管していたようです。エズラ記を読むとそのことがうかがわれます。(エズラ2:62)家系図によって自分のルーツを証明できないと、特に、レビ族の人々は祭儀に関わる仕事が与えられなかったようです。バビロンとの戦いと捕囚の混乱の最中にあっても、ユダヤの人々は家系図だけは持っていたのです。

 マタイ1章のイエス・キリストの系図を見ると、アブラハムからダビデまでが14代、ダビデからバビロン移住までが14代、バビロン移住からキリストまでが14代となっています。全部で42代です。ところが、アブラハムからキリストまでの名前を数えてみると41人しかいません。たぶん、ヨシヤ王の息子エホヤキム王の名前が抜けているのだと思います。エコニヤはエホヤキンとも呼ばれていて、エホヤキム王の息子です。

※ダビデは2回カウントされているので全部で42代、41人で正解でした。しかしながら、ダビデからバビロン移住までの代を再度確認してみたら、数に入っていないダビデの子孫である王が何人かいたので、実際は14代より多いはずです。きっと、14代でまとめたことにもダビデが2回カウントされていることにも何か意味があるのかもしれません。

■みなさんは自分の系図をどこまでわかるでしょうか。「ファミリーヒストリー」というテレビ番組がありますが、調べると結構古くまで遡ることができるようです。私の場合は調べたことがないので、戸籍抄本で見る限り、曽祖父の代までです。父方も母方も富山県出身のようです。「日本人のおなまえっ!?」という番組を見たことがありますか。私がちょうどイスラエルに行ってる間に、「佐々木」の名前について放映していたようです。残念なことに、私は見ることができませんでした。家内から少しだけ名前の由来を聞きました。

 「佐々木」という名前は本当に多いのです。銀行に行っても病院に行っても、必ず私以外に佐々木さんがいますから、佐々木という名前は本当に多いのだと思います。全国で13番目に多い名前だそうで、約70万人います。子どもの頃は佐々木さんがあまりにも多いので、もっと珍しい名前だったらよかったのにと思いました。学生の時のことです。親からの仕送りが同じ銀行を利用していたもう一人の佐々木俊一さんの口座に入金されていたことがありました。

 興味があったので、佐々木という名前をネットで調べてみました。そうしたら、「日本人のおなまえっ!?」でも言っていたように、滋賀県がルーツのようです。地名が佐々木の名前のルーツになったようで、佐々木の初めはそこから始まったそうです。平安時代や鎌倉時代にまで遡るらしいです。

 第59代宇多天皇の8番目の皇子、宇多源氏、源成頼が、自分の領地の地名からとって佐々木氏と名のったことが始まりのようです。その後、その地域で佐々木が増え、鎌倉幕府の成立のために源頼朝に加勢した結果、その功績が認められて、佐々木一族はおもに東北地方や中国地方に領地を広げたようです。約1000年前の事です。現在、東北に佐々木さんが一番多いのはそのためであると言うことです。本当かどうかかわかりませんが、そのようなことが書かれていました。

■ところで、ヨセフのルーツを遡ると、先祖のアブラハムは遊牧民でした。けれども、神様に選ばれて、アブラハムの家系は神様の特別な導きと祝福を受けました。アブラハムの子孫は増えて一つの偉大な国となし、さらに、アブラハムをとおしてすべての民族が祝福されるという約束を受けました。それにしても、そのあとに続く人々は、1000年間ずっと羊飼いでした。流れが変わったのは、ダビデの代になってからです。ダビデは羊飼いからイスラエルの王様になった人です。しかし、それから1000年後、その子孫であるヨセフは貧しい大工(石工)になっていました。今日はそんなヨセフの家系にスポットを当ててみたいと思います。

■16節~17節 ヨセフもマリヤも、ナザレという町に住んでいました。ナザレはガリラヤ湖から30キロくらい離れたところにある町です。AD1世紀ころのナザレは500人くらいの小さな町だったようです。先ほど写真を見てもらいましたが、彼らの住まいは岩山を掘って作ったような家でした。トルコのカッパドキヤにある岩のホテルに泊まったことがありますが、あの場所もそのようなところでした。夏は涼しくて、冬は暖かいそうです。

 ヨセフとマリヤの先祖は、元々はナザレの人ではありません。もっと南のエルサレムの近くに位置するベツレヘムでした。いつからかこの場所に彼らの先祖が住むようになったのでしょう。ベツレヘムといえばユダ族のダビデの生まれ故郷です。マリヤもヨセフもダビデの家系で、ダビデの子孫なのです。マタイ1章の系図はヨセフ側の系図、ルカ3章の系図はマリヤ側の系図と言ってよいと思います。なぜなら、マリヤの場合、レビ(祭司)の家系のエリサベツと親戚だったからです。ルカの系図にレビ系の名前が入っているのはそのためであると言えます。実際に、所々にレビ系の名前とはっきりわかる名前がありますから、レビ族の祭司の家系がユダ族のダビデの家系に合流したのだと思います。ルカの系図では、ダビデのあとソロモンではなくて、ナタンです。ダビデには息子がたくさんいました。その中にナタンという名前の息子もいました。ナタンのあと、レビ(祭司)の家系と合流したのでしょう。しかし、不思議なことに、バビロン移住のころ、エルサレム総督になったゾロバベルとその父サラテルの名前が、マリヤの系図にもヨセフの系図にもあるのです。しかも、サラテルの父親の名前が違うのです。ヨセフ側の系図ではエコニヤ、つまりそれは、エホヤキン王です。マリヤ側の系図ではネリです。なぜこのようなことが起こりえるのでしょう。いくつか理由を考えてみました。私なりに考えて、一番可能性として高いのをお話したいと思います。でも、それは、あくまでも私の推測です。

 この時代、バビロンとの戦いで両親や家族を失うような、普通では考えられないような状況があったと思います。皆さん、エステル記を思い出してください。あれもバビロン移住後の話です。エステルは両親を失って、その父の甥、モルデカイによって育てられました。モルデカイはエステルの従兄です。モルデカイは年配のように聞こえますが、まだ若かったと思います。このようなケースは他にもたくさんあったのではないでしょうか。もしかしたら、サラテルはマリヤの側のレビ系の家族に身を寄せていたのかもしれません。と言うのも、サラテルの父、エコニヤ(エホヤキン王)は37年間牢に入れられていました。けれども、その後釈放され、特別待遇を受けて宮殿で暮らしたのです。そのようにⅡ列王記25:27に書かれています。サラテルの父、エコニヤはずっと家族から離れて暮らさなければならない状況だったと思います。そして、サラテルにゾロバベルという子どもができました。ゾロバベルは、エルサレム総督に抜擢されて、大祭司ヨシュアと共に神殿再建にかかります。ゾロバベルの息子、アビウデがヨセフ側の系図を受け継ぎ、ゾロバベルのもう一人の子、レサがマリヤ側の系図を引き継いだのではないでしょうか。

 マタイ1章の系図もルカ3章の系図もヨセフの系図になっています。当時は女性が数に入らないような女性蔑視の時代です。ですから、系図はもちろんのこと男性中心になります。マリヤの系図であるにもかかわらずヨセフの系図と書いても不思議ではありません。二つの系図にある違いによって、聖書の信頼性が損なわれるわけではないのです。

 イエス・キリストは、王の王とも言われ、大祭司とも言われ、救い主とも言われています。マタイ1章にある系図は、キリストがダビデの家系から出た者、ダビデの子孫であることを証明し、昔から言われているように、その者が平和の君として永遠に神のみ国を治める王なのだということを示すための系図です。また、ルカ3章にある系図は、キリストがダビデの家系から出た者、その子孫であることを証明するとともに、昔から言われているように、その者が人の罪を贖う大祭司なのだということを示すための系図ではないでしょうか。救い主は、罪を贖うお方であり、そして、永遠に神のみ国を治める王なるお方なのであるということを、これらの系図は示していると思います。 

■18節~19節 イエス・キリストの誕生は次のようであったとあります。どのようだったかというと、その母マリヤとその父ヨセフとは婚約していました。ところが、ヨセフとマリヤはまだ結婚していないのに、マリヤに子どもができたことがわかったのです。ヨセフは悩みました。悩んだ末に彼が出した結論は、内密にマリヤを去らせると言うことでした。ヨセフはマリヤとの結婚を辞めようと決めたのです。しかし、そこで神様の待ったが入りました。ヨセフの夢の中にみ使いが現れて、マリヤを妻として迎えるようにという神様からのメッセージを告げられたのです。そして、ヨセフは、夢でみ使いから告げられたことばと、マリヤがみ使いから告げられたことばを、神様の命令として受け取りました。聖霊によって身ごもったマリヤを妻として迎え、生まれて来た男の子を、イエス(救い)と名付けました。こうして、聖書が言うように、ダビデの家系から、永遠の王なるお方、罪を贖う救い主なるお方、神の御子イエス・キリストがお生まれになりました。

■ヨセフもマリヤも、二人とも、神様を愛し、神様に従う信仰を持っていた人々でした。だからこそ、神様はご自身の計画のために、この二人をお選びになったのでしょう。神様の計画は、神様を愛し、神様に従う信仰を持っている人々を通して進んで行きます。しかしながら、イエス・キリストの系図を見ると、神様は不完全な人間をも用いて神様の計画を成し遂げられるお方だと言うことも言えると思います。それは、神様の恵みです。それでは、お祈りします。